先日、インプレスが清水理史氏の著書『できるGoogle NotebookLM 可能性は無限大!自分専用AIノート活用法』を3日間限定で全文無料公開するというキャンペーンをやっていた。2026年5月25日から27日の期間だ。医療とは直接関係のないWebマーケティング系の媒体からの情報だったが、「情報整理ツール」という切り口に引っかかりを感じて、昼休みに一通り読んでみた。
NotebookLMはGoogleが提供するAIノートで、自分でアップロードした文書をもとに質問応答や要約ができるツールだ。PDFや文章を複数読み込ませると、それらを横断した形で情報を整理してくれる。読んでいて率直に思ったのは、医療現場での使い道としてまず頭に浮かんだのは「診療ガイドラインの整理」だった。
消化器内科の領域では、H. pylori除菌のガイドラインが更新されたり、大腸がんのスクリーニング推奨が変わったりと、改訂が続いている。学会からのPDFを読み込んでおいて、「この患者背景の場合、一次除菌の推奨レジメンは?」と問いかければ、少なくとも文書の中から該当箇所を引いてくれる。ハルシネーションの問題はあるが、NotebookLMはアップロードした文書に根拠を限定する設計になっているらしく、そこは他の汎用AIより安全性という点では一歩前に出ている印象を受けた。
ただ、ここで立ち止まって考えてしまう。仮に引用が正確だとしても、ツールが出した回答をどこまで診療判断に組み込んでよいのか。医師としての責任問題は、ツールの精度の話とは別の次元にある。エビデンスレベルが高い情報を正確に引いたとしても、目の前の患者への適用判断は私がする。そこをAIが代替するわけではない。だから「業務改善」と「診療支援」は、医療現場では明確に切り分けて考える必要があると感じている。
NotebookLMが実際に使えそうだと感じたのは、むしろ事務・看護スタッフ側の業務だった。うちはスタッフ12名で1日に約80人の患者を診ているが、保険請求のルールや院内マニュアルの更新をスタッフ全員が正確に把握するのが難しい。「前回確認したレセプトの算定要件、どこに書いてあったっけ?」という状況が週に何度か起きている。
妻(看護師長をしている)に「NotebookLMにマニュアルを全部入れておいたら、スタッフが自分で調べられるかも」と話したら、「でも誤った情報を自信満々に提示されたら怖い」と即座に返ってきた。正直、同じことを私も思っていた。導入するなら、出力を必ず上位者が確認するフローを組み込まないといけない。
その意味では、今すぐ診療に組み込む話ではなく、「情報の入口」を整理するツールとして限定的に試してみる価値はあると感じている。具体的には、
もう一つ考えたのは、医学論文の読み込みへの応用だ。私は週末の登山の前後に論文を読む時間を確保しているが、英語の原著論文を複数束ねてNotebookLMに読み込ませ、「この論文群の中で消化器がんスクリーニングに言及しているものは?」のように絞り込むのは実用的だと思う。ただし、NotebookLMが要約した内容をそのまま鵜呑みにするつもりはない。あくまで「どの論文を深く読むか」の優先順位付けに使う、という位置づけだ。
医療AIの議論でよく出てくる「誤診リスクが上がるか下がるか」という問いに対して、NotebookLMそのものは診断を下すツールではないから、その問いは少し外れる。正確な情報を正確に引けるかどうか、そして引かれた情報をどう使うかは医師の側に委ねられている。その責任の所在がはっきりしている点は、むしろ私には使いやすい。
患者さんの安全に影響が出ない領域から、少しずつ試していくつもりだ。書籍の全文公開が3日間限定だったのは惜しかったが、概要を把握できたのは収穫だった。
NotebookLMはGoogleが提供するAIノートで、自分でアップロードした文書をもとに質問応答や要約ができるツールだ。PDFや文章を複数読み込ませると、それらを横断した形で情報を整理してくれる。読んでいて率直に思ったのは、医療現場での使い道としてまず頭に浮かんだのは「診療ガイドラインの整理」だった。
ガイドライン管理という現実的な問題
消化器内科の領域では、H. pylori除菌のガイドラインが更新されたり、大腸がんのスクリーニング推奨が変わったりと、改訂が続いている。学会からのPDFを読み込んでおいて、「この患者背景の場合、一次除菌の推奨レジメンは?」と問いかければ、少なくとも文書の中から該当箇所を引いてくれる。ハルシネーションの問題はあるが、NotebookLMはアップロードした文書に根拠を限定する設計になっているらしく、そこは他の汎用AIより安全性という点では一歩前に出ている印象を受けた。
ただ、ここで立ち止まって考えてしまう。仮に引用が正確だとしても、ツールが出した回答をどこまで診療判断に組み込んでよいのか。医師としての責任問題は、ツールの精度の話とは別の次元にある。エビデンスレベルが高い情報を正確に引いたとしても、目の前の患者への適用判断は私がする。そこをAIが代替するわけではない。だから「業務改善」と「診療支援」は、医療現場では明確に切り分けて考える必要があると感じている。
うちのスタッフが抱える「情報の迷子」問題
NotebookLMが実際に使えそうだと感じたのは、むしろ事務・看護スタッフ側の業務だった。うちはスタッフ12名で1日に約80人の患者を診ているが、保険請求のルールや院内マニュアルの更新をスタッフ全員が正確に把握するのが難しい。「前回確認したレセプトの算定要件、どこに書いてあったっけ?」という状況が週に何度か起きている。
妻(看護師長をしている)に「NotebookLMにマニュアルを全部入れておいたら、スタッフが自分で調べられるかも」と話したら、「でも誤った情報を自信満々に提示されたら怖い」と即座に返ってきた。正直、同じことを私も思っていた。導入するなら、出力を必ず上位者が確認するフローを組み込まないといけない。
その意味では、今すぐ診療に組み込む話ではなく、「情報の入口」を整理するツールとして限定的に試してみる価値はあると感じている。具体的には、
- 保険算定に関する院内FAQを文書化してNotebookLMに読み込ませる
- スタッフが質問した内容と回答を記録し、週次で私が確認する
- 医療行為に関わる判断には使用しないルールを明文化する
医学論文の予備読みに使えるか
もう一つ考えたのは、医学論文の読み込みへの応用だ。私は週末の登山の前後に論文を読む時間を確保しているが、英語の原著論文を複数束ねてNotebookLMに読み込ませ、「この論文群の中で消化器がんスクリーニングに言及しているものは?」のように絞り込むのは実用的だと思う。ただし、NotebookLMが要約した内容をそのまま鵜呑みにするつもりはない。あくまで「どの論文を深く読むか」の優先順位付けに使う、という位置づけだ。
医療AIの議論でよく出てくる「誤診リスクが上がるか下がるか」という問いに対して、NotebookLMそのものは診断を下すツールではないから、その問いは少し外れる。正確な情報を正確に引けるかどうか、そして引かれた情報をどう使うかは医師の側に委ねられている。その責任の所在がはっきりしている点は、むしろ私には使いやすい。
患者さんの安全に影響が出ない領域から、少しずつ試していくつもりだ。書籍の全文公開が3日間限定だったのは惜しかったが、概要を把握できたのは収穫だった。