「老害おじさん図鑑」というAI生成コンテンツが、X(旧Twitter)で大きな話題になりました。ChatGPTに短いプロンプトを入れるだけで、各ジャンルの「古参・こだわり強め」な人たちを図鑑風に分類してくれるという遊びです。カメラメーカー、レトロPC、SIer、ギター、ガンダム……と派生が次々に生まれ、「#老害おじさん図鑑」というハッシュタグまで定着しました。
この記事では、老害おじさん図鑑とは何か、ChatGPTでどう作るのか、職場で扱うときに気をつけたい点を整理します。あわせて、この現象が企業のAI活用にとって示唆的だと感じた点にも触れます。
老害おじさん図鑑とは
老害おじさん図鑑は、ChatGPTに「●●●の老害おじさん図鑑を作ってください」と一文入れるだけで生成できる、業界・趣味ジャンル別の「タイプ分類コンテンツ」です。出力には、タイプ名、特徴やあるある行動、よく言うセリフなどが図鑑の体裁で並びます。画像生成と組み合わせて、生き物図鑑のようなイラスト付きに仕上げる投稿も多く見られました。
火付け役になったのはカメラ界隈とされ、そこから大学教授編、Apple製品編、モデルガン編など、ジャンルを問わず派生していきました。どの業界にも「あの人だ」と思い当たるタイプが必ずいる——この「あるある」の解像度の高さが、拡散の原動力になったと考えられます。
生成AIの面白さは本来「まだ世の中にない文章を作れること」ですが、この企画がバズったのは逆で、「誰もが知っているのに言語化されていなかったもの」を一瞬で言語化して見せたからです。類型化・パターン抽出という、LLMがもっとも得意とする処理が、笑いという形で可視化された例と言えます。
ChatGPTでの作り方
作り方はシンプルです。ChatGPTを開いて、次のように入力します。
IT業界の老害おじさん図鑑を作ってください。
6タイプに分類して、それぞれにタイプ名・特徴・あるある行動・よく言うセリフを付けてください。「IT業界」の部分を自分の業界や趣味に置き換えれば、どのジャンルでも生成できます。出力を調整したい場合は、次のような指定を足すと図鑑らしさが上がります。
- タイプ数を指定する(「8タイプで」など)
- 図鑑風の項目を追加する(「生息地」「遭遇率」「対処法」など)
- 画像生成に対応したモデルなら「図鑑風のイラストも付けて」と依頼する
数分でそれらしいものができるため、生成AIに触れたことのない人への「最初の一歩」の題材としても手頃です。
職場で使うときの注意点
手軽な一方で、扱いを誤ると単なる悪口の道具になります。共有する前に確認したいのは次の点です。
- 実在の人物名や、特定の個人が分かる情報はプロンプトに入れないでください。あくまで「タイプの類型化」であって、特定の誰かを描写させた時点で性質が変わります
- 生成結果に特定の同僚を連想させる記述が出た場合は、そのまま社内チャットに貼らないのが安全です。受け取った側が「自分のことだ」と感じれば、ハラスメントと受け取られてもおかしくありません
- 年齢や性別への揶揄として使うのは避けてください。「老害」という言葉自体が強い表現であることは意識しておく必要があります
この現象が示唆的な理由
老害おじさん図鑑に並ぶタイプには、ジャンルを問わず共通する構造があります。「新しいやり方を『怪しい』『難しそう』と遠ざけて、昔のやり方を経験則と呼び続ける」という行動パターンです。
これは笑い話で終わる話ではありません。企業のAI活用の現場でも、まったく同じ構造が観察されるからです。新しいツールの検証を「様子見」で先送りする、若手の提案を「昔試してダメだった」で却下する、使ったことのないものを使わない理由から探す——図鑑のセリフとして並んでいれば笑える行動が、意思決定の場では静かに進行します。
興味深いのは、この図鑑を「自分の業界」で作ってみると、他人事として笑えなくなるケースが多いことです。SNS上でも「自分が該当しそうで怖い」という反応が目立ちました。生成AIが作った戯画が、固定観念の棚卸しとして機能したわけです。
まとめ
- 老害おじさん図鑑は、ChatGPTに「●●の老害おじさん図鑑を作ってください」と入れるだけで作れるX発のバズ企画です
- アレンジは項目追加(生息地・対処法など)で調整できます。実在の個人を特定できる使い方は避けてください
- タイプに共通するのは「新しいものを遠ざけ、昔のやり方を経験則と呼ぶ」構造で、これは企業のAI活用が停滞する構造とも重なります
もし手元で試すなら、自分の業界版を作って「自分に近いタイプがいないか」を眺めてみるのが、いちばん実りのある使い方かもしれません。笑いながら自分の固定観念を疑える機会は、そう多くありません。