先日、米国のテックメディアを流し読みしていたら、MacBook AirやBose QuietComfort Ultra Earbudsのセール情報がずらりと並んだ記事に目が留まりました。メモリアルデーセールの特集で、ノイズキャンセリングイヤホンが通常299ドルのところ249ドル、新型MacBook Airが200ドル引きといった内容でした。
個人的には、こういう記事は購買欲をそそられるより先に、別のことを考えてしまいます。
「この選定プロセス、社内のベンダー評価に似ているな」と思ったのです。
たとえば、あの記事でBoseのイヤホンが紹介されていた理由は明快でした。「現在入手できるワイヤレスイヤホンの中で最高のノイズキャンセリング性能」という一文があって、それ以上の説明がいりません。価格と機能と評価が三点セットでそろっている。消費者向けのレビューというのは、読み手の意思決定をとにかく短く済ませることを優先しています。
ところが、社内でのツール選定はそうはいきません。
私の部署では今年、営業支援ツールの更新を検討しています。部下25名が使うものですし、営業データが外部に出ることへの懸念もあります。セキュリティ要件、既存の社内システムとのAPI連携可否、ライセンス費用の年間試算、そして万が一障害が起きたときのベンダーの対応体制。この四つを最低限そろえないと、稟議書を書くスタートラインにすら立てません。
消費者向け記事で「15%オフ・即買い」と書かれるあのテンポで意思決定できたら、どれだけ楽か。
話を戻しますが、今年の春先に、部下の数名に試験的にAI系の営業ツールを触らせる機会がありました。正式導入ではなく、あくまで「どんなものか確認しよう」という程度の話です。
結果は、正直なところ二極化しました。
現場の感触はこういうものです。そして、この感触こそが稟議書で経営陣に伝えるべき一次情報だと、私はずっと思っています。
「投資対効果」という言葉を経営陣は好みます。ただ、数字だけ並べた資料より、「うちの部下が実際に使って、ここは効いた、ここは効かなかった」という具体的な記述のほうが、承認を得やすい場面が多い。少なくとも私の会社ではそうです。
ガジェットのセール記事が「実際に試した人のレビューをもとに推薦している」と明示するのと、構造としては同じだと思います。
今回の記事で改めて意識したのは、消費者向けのレビューメディアが「比較軸を明確にすること」にいかに徹しているか、という点です。Boseは「ノイズキャンセリングが最高」、NothingのヘッドホンAは「五日以上のバッテリー寿命と物理コントロール」、それぞれに一言で切れるポジションがある。
法人向けのベンダー提案は、どこも「総合的に優れています」という言い方をしがちです。私はここ数年、ベンダー評価の際に「御社の最大の強みを一言で言うと何ですか」と必ず聞くようにしています。答えが長くなるベンダーは、正直なところ社内調整でも苦労することが多い印象があります。
社内のDX推進という立場上、ベンダー選定は最終的に私の責任になります。稟議が通ってもトラブルが起きれば矢が飛んでくる。だからこそ、評価の軸をあらかじめ社内で合意しておくことに、かなりの時間を使っています。
ガジェット記事ひとつ眺めて、こんなことを考えているのが部長職の日常です。次の稟議書に向けて、比較軸の整理からもう一度やり直そうと思っています。
個人的には、こういう記事は購買欲をそそられるより先に、別のことを考えてしまいます。
「この選定プロセス、社内のベンダー評価に似ているな」と思ったのです。
私がガジェット選びに学んだこと
たとえば、あの記事でBoseのイヤホンが紹介されていた理由は明快でした。「現在入手できるワイヤレスイヤホンの中で最高のノイズキャンセリング性能」という一文があって、それ以上の説明がいりません。価格と機能と評価が三点セットでそろっている。消費者向けのレビューというのは、読み手の意思決定をとにかく短く済ませることを優先しています。
ところが、社内でのツール選定はそうはいきません。
私の部署では今年、営業支援ツールの更新を検討しています。部下25名が使うものですし、営業データが外部に出ることへの懸念もあります。セキュリティ要件、既存の社内システムとのAPI連携可否、ライセンス費用の年間試算、そして万が一障害が起きたときのベンダーの対応体制。この四つを最低限そろえないと、稟議書を書くスタートラインにすら立てません。
消費者向け記事で「15%オフ・即買い」と書かれるあのテンポで意思決定できたら、どれだけ楽か。
部下に使わせてみてわかったこと
話を戻しますが、今年の春先に、部下の数名に試験的にAI系の営業ツールを触らせる機会がありました。正式導入ではなく、あくまで「どんなものか確認しよう」という程度の話です。
結果は、正直なところ二極化しました。
- 提案書のドラフト作成に使った担当者は「明らかに時間が減った」と言っていました。
- 顧客データの入力補助として使った担当者は、入力項目の仕様が社内基準と合わず、結局手入力に戻したそうです。
- 上司への報告資料への活用を試みた担当者は、アウトプットの精度にばらつきがあって「使いどころが難しい」と言っていました。
現場の感触はこういうものです。そして、この感触こそが稟議書で経営陣に伝えるべき一次情報だと、私はずっと思っています。
「投資対効果」という言葉を経営陣は好みます。ただ、数字だけ並べた資料より、「うちの部下が実際に使って、ここは効いた、ここは効かなかった」という具体的な記述のほうが、承認を得やすい場面が多い。少なくとも私の会社ではそうです。
ガジェットのセール記事が「実際に試した人のレビューをもとに推薦している」と明示するのと、構造としては同じだと思います。
ベンダー評価の軸をどこに置くか
今回の記事で改めて意識したのは、消費者向けのレビューメディアが「比較軸を明確にすること」にいかに徹しているか、という点です。Boseは「ノイズキャンセリングが最高」、NothingのヘッドホンAは「五日以上のバッテリー寿命と物理コントロール」、それぞれに一言で切れるポジションがある。
法人向けのベンダー提案は、どこも「総合的に優れています」という言い方をしがちです。私はここ数年、ベンダー評価の際に「御社の最大の強みを一言で言うと何ですか」と必ず聞くようにしています。答えが長くなるベンダーは、正直なところ社内調整でも苦労することが多い印象があります。
社内のDX推進という立場上、ベンダー選定は最終的に私の責任になります。稟議が通ってもトラブルが起きれば矢が飛んでくる。だからこそ、評価の軸をあらかじめ社内で合意しておくことに、かなりの時間を使っています。
ガジェット記事ひとつ眺めて、こんなことを考えているのが部長職の日常です。次の稟議書に向けて、比較軸の整理からもう一度やり直そうと思っています。